羊と鋼の森

宮下 奈都著 文藝春秋

このタイトルはどういう意味かと、読む前はピンとこなかったのだが…。

1人の少年が高校生の時、学校にやってきた調律師との出会いをきっかけに、自分も同じく調律師を目指し、様々な思いを抱えながら成長していく過程を描いている。調律師になった青年は考える。理想の音とは?その音がどんな色の音か、演奏者が、聴衆が心地よい音とは?そして、生きていく中での目的を見つけた時の煌き、諦めると決めた時の挫折感など、その様子は淡々と、穏やかだ。

あっという間にページを繰るというよりは、読んでいるうちに心に落ち着きを取り戻せるよう。繊細な主人公、そして著者もまた繊細な人間なのだろうと想像できる。調律師という職業に熱い志を持ちながら、その想いを静かに表現しています。