そして、バトンは渡された

瀬尾 まいこ著 文藝春秋

物語は17歳の少女の言葉で淡々と紡がれていく。多感な時期に4度も姓が変わったが、彼女はいつも愛され、幸せだと言う。節目のたびに「覚悟」や現実を受け入れざるを得ない「諦め」があったはずだが、本の中ではさらりとかわす。「そんな簡単ではないはずだ」と感じながら読み進め、登場する「親」たちに偽善的なものを感じるのは、私がへそ曲がりだからだろうか。そして1つの疑問を感じながら読み、それが終盤で明らかになる。22歳に成長した「娘」は、その事実をいとも簡単に、冷静に受け止める。周りの親たちも幸せそう。

多くの読者は「その程度!?」と感じそうなのだが…。テーマが重たいのに軽いタッチで描いたという印象。読み手によって評価が分かれそう。